短編小説

『突破』

死んでから12日目にして、ようやく同類が見つかった。 保坂保子という中学生で、歳は同じだけれど幽霊としては僕より2年先輩だと言う。 「消えたくないならね、とにかく楽しんじゃうことよ」 幽霊の寿命について恐る恐る訊ねたところ、あっけらかんと保坂…

『完璧な梱包』

ネットオークションで連日高い評価を得ていた私に、 いきなり「残念な梱包でした」というコメントと最低点がつけられた。 梱包に絶対的な自信を持っていた私は、取引相手の勘違いか悪戯のどちらだと思った。 しかし100%不備がなかったとは言いきれないの…

『佐藤殺人事件』

被害者は地面に「さとう」というダイイニングメッセージを残していた。 赴任してきたばかりで最初は緊張していた私だったが、 現場を目にしたところで少し肩の力が抜けた。 被害者はペンションの経営者で、発見したのは宿泊していた5人の旅行者。 それほど…