うさこちゃんは定点観測をしない

うさこちゃんの だいすきなおばあちゃん (ブルーナの絵本)

うさこちゃんの だいすきなおばあちゃん (ブルーナの絵本)

普段は意識されませんが、うさこちゃんの作品群では時間の経過を読み取ることができます。うさこちゃん受胎告知から始まり、出生、冬の到来、誕生日、初めての学校、突然の入院、アートへの目覚めなど、ゆっくりと、しかし確実にうさこちゃんは成長していきます。
本書では毎年誕生日にクマのぬいぐるみをプレゼントしてくれたおばあちゃんが、なんの前触れもなく死んでしまうところから始まります。
ストーリーに起伏はなく、おおつぶの涙を流すものの、残されたうさこちゃん一家は淡々とその死を受け入れ、森へ棺を運びます。表紙の緑色は、森の緑なのです。
死という重いテーマを、うさこちゃんという愛嬌のあるキャラクターで真っ向から扱ったディック・ブルーナ。彼の絵本作家としての妥協のなさがひしひしと伝わります。3才から。